デンヨーに就職した後、地元の工業高校にコーチとして手伝いに行くようになりました。20歳の頃、少年スポーツ団の監督が亡くなり、いただいたホームランボールをお通夜に持参しました。

でも、監督から本当にいただいたのはボールではなく、野球の根っこ、字を丁寧に書くこと、歩き方など、人としての基本でした。振り返ると、私はずっと「もらってばかり」だったのです。

だからこそ、誰かに与えたい。いただいた恩は返せないけれど、「恩送り」として次の世代につなげたい。生徒から進路の相談を受けるうちに、「これを仕事にできたら」と思うようになりました。

どうしても工業の先生になりたくて、夜間大学を受験しましたが不合格。一週間後、実習助手の採用試験があると知り、「これがラストチャンスだ」と思って挑戦。倍率は12倍。合格通知の受験番号を見た瞬間、手が震えました。

これが、私が先生になったきっかけです。